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その日、珍しく理紗が昼間に私の部屋にやって来た。
「ママ、今日は紹介したい人が居るの」
そう言って彼女が手招きをすると視界に長身の男性が現れた。
「彼は私と同じ脳神経外科の医師、片山凛太朗先生よ。私の婚約者」
その男性が私に笑顔を向けてくれる
「片山です。お義父さんには先ほど挨拶をさせて頂きました。必ず、理紗さんを幸せにします。彼女との結婚をお許し頂けますか?」
驚いて彼を見つめた。とても素敵な笑顔だ。この男性ならきっと理紗を幸せにしてくれるだろう。
(はい、凛太朗さん。理紗のこと宜しくお願いします)
もちろん声に出せない私はそう頭の中で呟いていた。
でも、その時、二人が大きく目を見開いた。
「凛太朗、今、ママが頷いた様に見えたけど?」
「うん、確かに首が動いたね。お母さん、もしかして意識が回復されていますか?」
(えっ?)と思い、もう一度(はい)と頭の中で呟いた。私の首がゆっくり動くのを感じる。
「やっぱり。ママ分かるのね? 凛太朗、パパを呼んで来て」
直ぐに浩二さんが私の前に現れた。
「……百合、本当に僕達の事が分かるのかい?」
(はい)ともう一度ゆっくり頷く。それを確認した浩二さんは驚いた様に私を見つめると、ベッドの上の私を力強く抱きしめた。
「百合、良かった。本当に……良かった……」
私を見つめる理紗も感極まった表情を浮かべていた。
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