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その言葉通り、二週間程経ったある日、浩二さんはゴーグルの様な機械を持って来て、私の右目に取り付けてくれた。その中には小さな画面が在り文字が表示されている。
「これは僕の開発した瞳入力装置だ。百合、画面が見えるかい?」
私は小さく頷く。
「そこに”あいうえお”が並んでいるだろう? 瞳を動かすと文字がゆっくり動く筈だ。そして使いたい文字を真ん中に置くと選択される。ちょっとやってみて」
もう一度頷くと、画面に映った文字を見ながら瞳を動かしてみた。その動きに従い文字列が動いていく。私はずっと浩二さんに言いたかった言葉を入力してみた。三十秒程で入力が終わると音声合成された声が響いてきた。
「ア リ ガ ト ウ」
浩二さんの顔が喜びに包まれていく。大粒の涙が溢れているのが見える。浩二さんがギューっと私を抱きしめた。
「百合、やった! 良かった!」
私も嬉しくて、大きく頷いていた。
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