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急変
空を見上げていた浩二君のお父さんが声を上げた。
「天気予報が外れたな。雨が降るぞ」
いつの間にか空が黒い雲に覆われて、風も急激に強まってきた。私達は慌ただしく下山を開始する。でも直ぐに登山道は押し寄せて来た雲の中に入って視界が極端に悪くなってしまった。前を歩く浩二君の背中も見えづらくなってきた。程なくして雨粒が頬に当たり始める。
山の稜線の登山道を歩いていた時だった。私は足元の石に躓いて、大きく体勢を崩した。
「えっ?」
その時、誰かが私の手首を掴んだ。振り返ると浩二君が右手を大きく伸ばしている。でも勢いよく倒れていく私を止めることは出来なくて、私達は稜線の登山道からその下の急斜面を滑落してしまった。
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