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大好きだよ
身体を揺らされて目を開けると、もう雨は上がって外は明るくなっていた。
「百合、さっきの登山道まで戻ろう」
「えっ? でも……、私、歩けないけど」
「大丈夫、僕が連れて行くから。背中に掴まって」
目の前で浩二君が背中を向けてしゃがんでくれる。私は身体を起こすと彼の首に両手を廻した。彼が立ち上がると身体が持ち上がっていく。
「あっ……、えっ?」
彼の両手が私の両脚を抱えてくれる。少しだけ恥ずかしくて身体を彼から離した。
「百合、もっとちゃんと掴まって!」
浩二君が振り返って声を上げた。
「あっ……、はい」
彼の背中をギューっと抱きしめる。心臓が破裂しそう……。
浩二君が力強く歩き始めた。
「あの……浩二君。大丈夫? 重たくない?」
「ああ、うん。百合って軽いんだな。大丈夫。絶対、お母さんの所に連れて行ってあげるからな」
その声にキュンとしながら浩二君の背中をもう一度抱きしめた。
「浩二君、ありがとう。大好きだよ」
その言葉に浩二君が大きく頷くのが見えた。
浩二君が私を背負ったまま、肩で息をしていて、とても辛そうだ。でも彼の足取りは衰えることなく森の中を登っていく。そして一時間ほど歩いた所で、私達を探していた浩二君のお父さんと再会することが出来た。
ーーー
この経験は私と浩二君の関係を大きく変える事になる。そう、この後、私達はただの幼馴染から恋人になったの。そして十年後、私達は結婚することになる。
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