28人が本棚に入れています
本棚に追加
飛行機に乗って
「理紗、見える? この飛行機、あの滑走路から飛ぶのよ」
「うん、やっとパパに会えるね」
私が浩二さんと結婚して十年が経っていた。その日、私は六歳になる娘の理紗を連れて成田空港からシカゴ行の飛行機に乗っていた。
浩二さんは半年前からシカゴ大学の准教授として米国で勤務していた。私は仕事の関係で彼と一緒に米国に行けなくて、半年遅れで理紗を連れての渡米となった。飛行機の中で、私達母娘は米国での新生活への期待で一杯だった。
私達の乗る席は左の翼の少し前で大きなエンジンがよく見える。初めて飛行機に乗る理紗は窓側の席で目を輝かせながら外を眺めていた。
「皆様、離陸致します。シートベルトの確認をお願いします」
エンジンの音が高まって『キーン』という甲高い音色が響いて来た。同時に身体がシートに押し付けられる。景色が物凄い勢いで流れていき、滑走路を離れて浮き上がった。
「わぁ、飛んでるよ!」
理紗が見つめる窓の外には成田空港周辺の緑が広がっていた。
最初のコメントを投稿しよう!