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その時、『ドン! ドン!』という音と共に機体が震えた。外を見ていた理紗が振り返った。
「ママ、さっき、鳥さんがエンジンに入って行ったよ」
その声に驚いてエンジンを見ると、『ボン』と炎を噴出して止まってしまった。
前の席の男性が声を上げた。
「左エンジンが止まったぞ!」
右の窓側からも声が上がる。
「右エンジンもだ。止まってる!」
機体が大きく左に傾斜している。
その時、アナウンスが聴こえて来た。
「バードストライクで両エンジンが停止しました。エンジンの再始動を試みています。成田空港に引き返します」
パイロットの冷静な説明に少しだけ安堵していた。
「ママ、どうしたの?」
「うん、鳥さんがぶつかったから空港に戻るんだって」
「ふーん、パパに会うのが遅くなっちゃうね」
その時、再びアナウンスが聴こえて来た。その説明に私は恐怖した。
「乗客の皆さん、エンジンの再始動が出来ないので不時着します。衝撃防止姿勢をお願いします。客室へBrace! Brace! Brace!!」
その瞬間、客室乗務員の大声が響いて来た。
「安全姿勢!! 安全姿勢!! 安全姿勢!!」
「前に屈んで!! 頭を下げて!!」
その声は機体が不時着するまで何十回も続いた。私は頭を大きく下げると理紗をギューと抱きしめた。その瞬間、物凄い衝撃が襲って来た。
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