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「優奈……?」
私の部屋の前で恐る恐る私の名前が呼ばれている。
姉のようだ。
だが、私は無視した。
なんだか、気まずかったのだ。
きっと弱さがバレたくなかったのだろう。
姉は強いから。
私はずっと、強い姉が羨ましかった。
優しくて、素直で、友達だってたくさんいて、勉強もできて……。
姉に勝てるところなんて何もなくて……
ムキになってるだけなのは分かってる。
心の余裕がなかっただけなのも知ってる。
でも、それでも私から口を開く気にはなれない。
大体、いたずらし続ける姉が悪いんじゃないか。
誰だって心の余裕がないときにいたずらされたらムカつくだろう。
「えっと……ごめんね?」
いつもの姉の口調で謝られた。
それでも私は口を利かなかった。
「優奈には……笑ってほしくて……」
……笑ってほしい?
どういうことだろう。
それがなにかいたずらにつながるのか?
「優奈、高校に入学してから……笑顔が減ったでしょ?だから、その……せめて、家ではくだらないことで笑ったりしてほしいなって思って……でも、調子に乗りすぎたね。ごめん……」
……どうやら、姉にはバレていたらしい。
二度目のごめんは、一度も姉から聞いたことのないような、本当のごめんに聞こえた。
私は扉を開ける。
いつまでも自らの世界に籠もってはいけない。
「私も……心の余裕がなくて……ごめん」
ぶっきらぼうにそう言ってやった。
姉は心底驚いた顔をしている。
そして、笑顔になって言った。
「……似てるね」
「なにが?」
「ううん!なんでもない!!」
意味深な言葉を口にされ、なんのことかわからなくなるが、問いただしても答えてくれなかった。
意外と、こういう時間が大切なのかも知れない。
きっと、忘れがちになっているいつも通りが、私を支えてくれているのだろう。
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