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「うぉぎゃあああ!」
叫び声を上げて、かろうじてよけた。
頭上から大剣を振り下ろされたら、誰だってそうなる。
貴族だろうが王妃だろうが、はしたない叫び声を上げるだろう。
だから私は遠慮なく声を上げて、よけて、身構えた。
「ふむ。度胸もあるか」
大剣を振り下ろしてきたのは、甲冑を着た男。
何?
不審者?
それとも今から戦争でも始まるんか?
いや戦争はないか。
王族や貴族を襲うならともかく、ただの事務員を攻撃しても戦争開始の合図にはならない。
それに。
よく見たら、この甲冑は我が国の騎士団の物だ。
しかもフルアーマー。
騎士団の中でもフルアーマーを身につけられる者は、優秀な王直属の騎士しかいない。
てことは。
「や、やめてよ! 王直属騎士ともあろう者が、場末の事務員、不器量な女事務員を犯して何になる!」
「何?」
「女を襲う程、不自由していないだろう! それとも無理やりでしか興奮しないヘキなのか!」
「……何を言っている?」
騎士は、フルアーマーの頭部分を取った。
黒髪短髪、美丈夫な青年が現れる。
顔面中央に大きな傷跡。
この顔は……。
「非礼を詫びよう、リーリエ。私は、」
「王国軍騎士団長?!」
私は叫んだ。
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