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「何か理由でもあったのでしょうか。往来で人を切りつける理由が」
私は騎士団長に聞いた。
こんなアホな事に理由なんてないと思うけど。
「度胸試しにはこれが一番だと、友人から言われたんだ」
と、騎士団長様は言う。
「今すぐ縁を切ったほうがいいですよ、その友人と」
呆れた。
そんな理由で切りつけられちゃたまったもんじゃない。
「しかし、なぜわたくしに度胸試しを?」
「王立大図書館の事務員・リーリエ。君の噂は聞いている」
「はあ……」
噂ねぇ。
ろくでもない噂なんだろうなきっと。
庶民のくせにお偉いさんをコマして就職先をゲットしたとか。
王都でいじめられて、泣いて故郷に帰ってきたとか。
それにしても。
なんでこの騎士団長、私の名前を知ってんだろう。
「リーリエ」
「は、はい」
騎士団長・ヴィクトルは改まった態度で私を呼んだ。
思わず背が伸びる。
芯の通った声、肺活量、命を下す威厳。
お人好しに見えてもやっぱり「団長」だ。
「君には、騎士団内の事務員を務めてほしい」
「え?」
「引き抜きに来たんだ、君を」
えええええ?!
引き抜き?!
しかも、団長が自ら、わざわざ?!
なんでよ?!?!
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