雨空バス

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「着いたら起こして」 「は? いやです。っていうか肩もかさないからね?」  ふん、と身体ごと窓のほうを向くと、見たくもない自分の顔が写っていて嫌になる。 【ぜんぜんかわいくない】 【性格もそんなに良くない】 【そもそも釣り合ってなかった】 【浮気されて当然じゃん?】  窓の中の不機嫌そうな自分(ひと)が言ってくる。うるさいな。もう、わかってるってば! 「また付き合いたい?」 「……は?」  エンジン音にかき消されそうなくらい、低く掠れた声だった。  たぶん一度しか言わないんだよ。  このズルい男は。
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