3 ハプニングの秋

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「え? え? い、妹!?」 「そう。妹さんも同じ製菓学校でパティシエール志望。年子だからね、来年の新採用ってことね」 「ちょーっと待ってくださいねー……」  一旦停止した思考を再起動してみた。ははあ、なるほど。年子のパティシエ兄妹というわけね。小野寺きょうだい。なるほど。 「同じ職場で……いいんですか?」  恐る恐る、小野寺くんの顔を見た。 「だから。べつにいいよ」  頭に『だから』が付くということは、それだけ何人もの人に同じことを訊ねられたからだ、たぶん。 「やりにくくないの?」 「関係ないし」 「妹さんが先に厨房でも?」 「俺は俺」 「でも……」 「関係ない」  シェフの面接がゆるゆるでほぼ即採用というのは私もよく知っていた。これは……まさかの同僚兄妹が実現するのかも。 「仲は……いい?」  どうやっても妹を愛でる小野寺くんは想像できない。うん、できない。いやでも、なくも……ない? まさかの? どう? 「仲? さあ。しばらくちゃんと喋ってないし」  淡く期待したそこでのギャップはないらしい。まあいきなり妹にデレられても困惑するけど。 「あいつの仕事ぶりは好きじゃない。趣味の菓子作りの域を超えてない。雑、未熟、とろい、おまけに打たれ弱い。ついでに頭も悪い。理解力が低い」 「う……言い過ぎです」  案の定の辛辣ぶりに早くもめまいがした。本当に自分にも周りにも厳しいんだから。  なるほど……これは波乱の予感だな。 「はい! よろしくお願いします!」という元気な声が休憩室から聴こえていた。
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