未来の日本

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「コンビニ知らないって、お兄さんどこからなの」 「僕は鹿児島の基地から来たんだが、気づいたらここにいて」 「なんで基地?」 「五日後に特攻隊員として出撃しなくてはいけないんだ。ここはどこだ?」 女性は大きな声でお腹を抱えながら笑いだした。一体なにがおかしかったのかがわからなかった。僕は少し怒ってしまい、大きな声を出してしまった。 「基地に戻らなければいけないんだ!米軍に勝たなければいけないんだ!零戦に乗って...」 「え、ちょっと待って?今さ、米軍とか勝たなきゃとか零戦がなんだかわかんないけど、そういうの言った?」 「はい」 女性は一瞬固まって、我に返ったかのように僕を不思議そうな目で見つめてきた。そして口を開いた。 「お兄さん、名前は?」 「竜馬です。君は?」 「私はゆずは。竜馬って呼んでよき?」 「はい、僕はゆずはちゃんでいいのか?」 「ちゃん付け嫌いだからゆずはでいいよ。それよりさ、竜馬はいつ生まれなの」 「僕は1926年生まれだ。戦争に巻き込まれてしまったが...」 ゆずはは大きなため息を吐いて近くにあった長い椅子に座った。続いて僕もゆずはの隣に座った。 「竜馬ってさ、戦時中の人ってこと?」 「はい、出撃命令で五日後に...」 「死にに行くと?」 「死にに行くって、そんな言い方ないじゃないか」 「当時の人はそう言うけどさ、今のうちらの世代は戦争の結果知ってるからさ、ただ死にに行ってるようにしか言えないんだよね」 ゆずはの言っていることに、僕は少しだけ納得した。今僕がいる世界は僕がいた年の77年後。戦争の結果を知っているのは当たり前。 それに、ただ死にに行っているというのもなんとなくわかってしまう気がする。日本政府は国民に、米軍に勝っていると言っているが、そうではないことを知っているから。 僕は険しい顔をしていたのか、ゆずはは僕を見ておーいと手を振っている。 「竜馬すっごい真剣な顔してるけど大丈夫?」 「大丈夫」 「喉乾いてたんだっけ、水がいるんだっけ?」 「はい、ここに来てから何も飲むものがなくて」 「お金ってある?」 「一円なら」 「一円じゃ何も買えないね」 「なんでだ?一円さえあれば米も買えるぐらい価値があるんだよ?」 「当時は今のお金だとまあ...七百円相当の価値があったんだっけ?今ではお米買うのには安くて千円ちょっとはするんじゃない?知らないけどさ」 「千円もするの!?俺の時代だと、小さい家とか買えるんだけど」 「今だとねー、家を買うなら数千万円もかかるんじゃないかな?」 「えぇ!?数千万円も稼ぐ人ってあんまりいませんよ」 「うわぁ、昔と今のお金の価値ってすっごい違うねぇ」 1945年と2022年のお金の価値の差に俺は言葉を失うほど驚いた。
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