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慣れない
おにぎりを食べて、水を飲んで話していた。過去の日本はどうなのかとか、未来の日本はどうなのかとか。ゆずはは歴史が大の苦手だと言っていた。特に戦時中、僕が生活している時代が苦手だと。
「後数日で歴史のテストがあるんだけど、それも戦時が内容で、普段より難しくするって先生が言っていて」
「テスト?」
「試験ね。あー、敵国の言葉使っちゃダメだったんだっけ?」
「はい」
ゆずはは納得したように頷いてカバンから何か本みたいなものを取り出した。
「それは?」
「ん?歴史の教科書だよ」
そう言って教科書を開いて、何かを探している。紙を一枚一枚めくって。
「あった!竜馬、これ」
ゆずはが指を指しているところを見ると、空襲の写真があった。僕が来た時代と文字が少し違って読めないから、ゆずはが読んでくれた。
「この写真、なんなのかわかる?」
「空襲の写真じゃないか、煙が普通のと違うが」
きのこのような形した雲、いや、煙が上空で捉えられてる。
「...戦争、どっちが勝ったと思う?あ、竜馬は特攻隊員だし、知りたくなかったら言わないよ」
「...米軍が勝ったんだろ?」
「うん。この写真は原子爆弾が落とされたときの写真なの。広島と、長崎」
「いつだ?」
「8月6日と8月9日。被害が凄くて、沢山の人が死んじゃったから」
「天皇陛下が玉音放送で敗戦を伝えたのか」
「うん...」
「ということは、今この時代は米軍に支配されているというのか?」
米軍に支配された日本を想像すると嫌気が指す。我が国、日本もそうだが、米は列強であり、強い。差別も多いと聞いた。
そんな米が日本を支配すると日本人は奴隷になってるに違いない。真剣で必死な眼差しをゆずはに送りつけ、答えを待つ。
「んー、今は支配されてないよ。最初はGHQ(連合国軍最高司令官総司令部)が日本の政治に色々、口出しみたいなのをしてた気がする」
「今はどうなんだ?」
「今はもう独立してるよ。条件付きでだった気がする。なんだっけ?」
ページをめくって何かを探しているゆずは。1945年にいたときの僕の上官が言ってたように、日本は占領されるということはなかったことに安心する。だけど、この時代が平和なのは僕の時代の多くの人たちが亡くなったから。
「あった、これ。サンフランシスコ条約ってやつで独立したんだって。あとは日米安全保障条約が結ばれたって」
「なんだそれは?」
「正直私も細かいところはわかんない。歴史は大の苦手なんだもん。知らないといけないものは覚えてるけど」
「そうか...日本が米に占領されていなかったことに安心する」
「まあね」
ペットボトルの水を飲んで一息ついたとき、ゆずはの鞄から音が鳴った。
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