四季彩ゝ

1/1
前へ
/13ページ
次へ

四季彩ゝ

白と黒しかないわけじゃない ただただ、閑かに秘やかに 命の色の源を 奥底に貯めているからさ 白が目立って黒が際立つ ただそれだけのことなんだ だからじっくり見てみなよ 春が近づいてきたときは 木々の周りの雪が溶け 黒々とした土が見え それからうっすら黄色い花と 光る翠が顔覗く ね? 貯めていた命の色が ちゃあんと顔を見せてくる そのうち真白なコブシの花が 雪と違った光り方 木々の枝先よく見てみたら 紅を含んだ強い色 遠目に見たら薄紅の靄がかかったように見え ほら、春霞 千の色 春の命は若々しくて 瑞々しくて、幼くて どんな色にも見えちゃうような ちょっと儚く不安定 そんな風にも見えるかな? だけど中には鮮やかで深い己があるんだよ これから披露してくれる しっかりじっくりみていてごらん ほらね、陽射しの強さと共に 緑が力を増してきた 光りそのものみたいだろ? とても力を感じるだろう? だけどまだまだ重みはないね だから良いんだ 跳びまわれ! ギラギラ照り付く陽射しを浴びた 緑に同じ色は無い 命の色の烈しさを その目にしっかり捉えてごらん 飛び交う虫や獣さえ 彩り豊かに、逞しく 力強さを見てとれる 色とりどりの花々も 夏は色合い鮮やかに 力強さで咲き誇る 水の滴に映るのも まさに、生き生きとした世界 色濃く移る 命たち 枯れる、なんて言葉より 色付く、だとか、染まる、とか もっと言い様があるだろう? みてみなよ まさに命の色の舞 緑だった時よりも 更に個性が際立って 秋爛漫の錦織 同じものなど何も無い 同じ色など何処にも無い これぞ、命の色の舞 ひらひらと 舞い降りる ひらひらと 散り積もる 朽ちて(ほど)けて戻ってく 命の色の素となる ちらちらと 降ってくる きしきしと 降り積もる しばし閑かに見えるけど 冬の厳しさ、重さには 漬物石が必要な 美味い漬物みたいにさ 命の色が 醸される そんな大事な時期(とき)なんだ 山の色など見なけりゃ視えぬ 四季彩ゝの命たち
/13ページ

最初のコメントを投稿しよう!

0人が本棚に入れています
本棚に追加