5.夢のような出来事はあっという間に※

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5.夢のような出来事はあっという間に※

 まさかの対面座位というヤツに驚いている暇もなく、俺は喘ぐことしか出来ずにリツキさんを見つめるのが精一杯で。正直、目元も涙でグシャグシャだし何が何やらだ。 「あぁんっ!」 「サツキ、ちゃんと捕まってろよ?」  俺が言う通りにリツキさんの首に腕を回すと優しい律動は少しずつ速さを増していき、何度も最奥を叩く動きに変わっていく。  ギシ、ギシ、とベッドが軋む音が激しくなってきた行為を知らせてくるみたいだ。 「あ、あ、あっ! リツキさん、リツキさん…っ……!」 「さん付け、言いにくそうだな……同い年なんだし、なくていいのに」 「んっ、あっ! あぁっ! 激し、激しいからぁ……」 「そんなでもないんだけど、初めてだから仕方ないか。ほら、俺もそろそろ出そうだから。頑張れ?」  耳を()まれながらペロっと舐められる。  些細(ささい)なことでも敏感になってしまった俺の身体は、快楽を残らず拾おうと必死だ。  何が何だか考えられないうちにリツキさんがスパートをかけて俺の双丘を掴み、ガツガツと腰を打ち付けてくる。 「ひゃぅっ!? あぁぁ、あ、あ、あ……」 「サツキ……そろそろ……出すぞ……っ」 「あ、ああぁぁ……俺、俺、また、またきちゃ……ああ……ア、あぁぁぁっっ!」  俺が弾けるのと同時にリツキさんが膨らんで俺の中に大量に吐き出していることが分かり、その熱さに俺の身体も驚いて小刻みに震えだす。  そう言えば、生じゃないか……と達してから思ったけどもう遅く、夢にしてはリアリティがありすぎて俺は呼吸もままならない。  ぐったりとリツキさんに寄りかかっていると、背中を何度も撫でられる。 「……はぁ…何か、リアルすぎて、いっぱい、いっぱい、です…」 「まぁ、そうだよな。身体は痛くないか? そのまま本番しちゃったしな。ナカに思いっきり出しちゃったから、洗わないとお腹痛くなっちゃうか」 「今は何か、お尻が、痛いかも……でも。え、あ、ええと。あ、はい……」  さっき散々喘いでたよなぁと自分で思い出して恥ずかしさのあまりリツキさんの肩に顔を擦りつけていると、両腕ですくい上げられてお姫様抱っこされてしまう。 「ふぁっ!? な、ななな……」 「綺麗にしないとな? そういえば、ここ風呂あったっけ……都合よく風呂があれば……」    リツキさんの言葉にもやもやとした空間が少し晴れて、浴室っぽいドアが現れた。   「さすが神様。気まぐれすぎる」 「は? 神様?」 「いやいや、こっちの話。じゃあ、行くぞ」  スタスタと俺を抱いたまま浴室へと入り、その後念入りに身体を洗われたかと思ったらついでにもう一回戦されてクタクタになったりなんだりした後――  漸く身綺麗になって、何故か綺麗になったベッドへ丁寧に寝かされた。  +++ 「さて、ここで眠るとお別れなんだけど。あと聞きたいことはある?」  隣同士で寝転がりながらのピロートークまでついている萌えな展開もそうだし、ここまできたら聞きたいことだらけなのは確かなんだけど……一番の疑問を聞いてみることにした。 「あの、リツキさんは俺の願い事で来てくれたってことでしたけど。俺の願い事を知ってるってことですよね」 「あぁ。素敵な出会いがありますように、だっけ? 素敵だったかどうかは分からないけど、これも気まぐれな設定から生まれたみたいなものだし」 「設定って、それこそ漫画や小説みたいな……。俺は楽しかったですけど、だとしたらリツキさんの設定が気になります」  その言葉にリツキさんは楽しそうに笑って首を傾げる俺を優しく撫でながら、悪戯な表情を向けてくる。 「サツキに分かりやすく言うなら、攻めだけど。攻めは攻めでもサツキの願望が詰まった攻め。ついでに言うと、サツキが自分と真逆だと思っている詰め合わせセットから出来上がったのが俺」 「詰め合わせセット?」 「そ。さらに言うと……俺はサツキだからなー。リツキだけど、サツキ」 「え、え、え……」  俺は言葉を失う。これこそ絶句というヤツだ。  パクパクと金魚のように口だけが動いてるけど言葉が出ない。  (リツキさんはサツキ。つまり俺ってこと? 俺は妄想で自分とセックスしたってこと?) 「サツキがなりたいって思っている自分が俺だから。厳密に言えば別人だけど、ベースはサツキなんだから。サツキだって実はイケメンってことになるな」 「いやぁぁぁぁ…………自分を掛け算とか、恥ずかしすぎて死んじゃうんですけど! ……っていうか、自分をべた褒めしてたとか、どういう羞恥プレイ?」 「そんなにショックを受けなくてもいいのに。俺は楽しかったけど? サツキは受けにも攻めにもなれるんだなー。さすが腐男子。妄想力が違う」 「そんな妄想力でこんなシチュでエッチするとかぁぁ! 嫌だ、忘れて、忘れてくださいお願いします!」  声をあげて笑い続けるリツキさんこと、もう一人の俺はこんな俺でも見捨てずにハグしてくれる。  真実を知った今となってはどうしていいか分からないけど、もう夢オチだと思って諦めるしかない。 「やっぱり内緒の方が良かったよな。ごめん。まぁ、神様からのプレゼントだと思ってくれればいいよ。それにそろそろお別れだしな」 「あ……そっか。夢は覚めるものだし。でもその……気持ちよかったから、いいや。どうせなら……ううん、何でもない。気にしないで」 「そう? じゃあ、今度こそお別れだ。おやすみ、サツキ」  最後に優しくお別れのキスをされると、自然と目が閉じていく。  (何か、凄い怒涛の体験しちゃったけど……どうせなら起きても覚えてたらいいのにな……)  そんなことを思いながら、深い眠りに落ちた。
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