31人が本棚に入れています
本棚に追加
7.夢じゃなかった
※こちらが加筆ver.のお話になります。
+++
リツキとの記憶を取り戻した俺は幾つか質問をしてみた。
質問攻めだな、と、笑いながらリツキは丁寧に俺の質問に答えてくれる。
「まぁ、何となくの気まぐれなんだろうけどな。俺はこの街に住むことになったんだ。住居もあるし大学も行ってるし、何ならバイトもしてるから安心していいよ」
リツキの説明にポカンとしていると、優しく頭を撫でられてしまった。
てっきり俺の妄想の中の人だと思い込んでいたリツキは、今、目の前に。現実に立って存在している。
しかも、普通に生活をしてこの街に溶け込んでいると言うのだから驚きだ。
「だってサツキが願ってくれただろ? だからだよ。俺もサツキに会いたかった。これからはもう、そんなに格好つけなくてもいいよな?」
リツキは嬉しそうに俺に笑いかける。その笑顔が眩しくて、俺はそんな風に笑った記憶がないから何だか見ていて照れくさくなる。
しかも格好つけてたって……確かに、何となくそういう節はあった気はしたけど。
それも俺の妄想の成れの果てだと思うと、本当に恥ずかしくなってしまう。
俺は一人百面相をしていたらしく、そんな俺を見てリツキがクスクスと笑う。
咳払いをしてから、改めてリツキに向き直る。
「でも……俺もちょっと嬉しい。いきなり馴染みすぎなのはツッコミどころが多すぎて追いつけないけど。俺も思ってたから。また会えたらいいのにって」
「そっか。それなら余計に嬉しい。なぁ、このまま俺の家に来ない? サツキのこと抱きしめたくなった。それ以上もしたくなったかも?」
言いながら、リツキは問答無用で俺を抱きしめてくる。いくら周りに人がいないからって、外でこんな風に抱きしめられたら恥ずかしい。
それにココは現実世界であって、男同士がイチャついてたらもの凄く目立ってしまう。
「わ、分かった。分かったから一旦離してってば。残業で朝まで仮眠とって働くって家に連絡するから。それでいいよね?」
「それって、朝まで俺として……」
「あぁぁっ! 最後まで言わなくていいよ! それだけが目的じゃないけど、もうちょっと話したいなって思ったからだってば」
俺が慌てると、リツキはまた嬉しそうな顔をするから。俺は何も言えなくなってしまった。
「お腹空いてるだろ? 何が食べたい? 大体作れると思うけど」
「さ、流石スパダリ……家事もバッチリですか」
「まぁ、妄想と夢の結晶だし?」
「そ、それは言わないでって! こんなに恥ずかしいのにどうして一緒にいたいって思っちゃうんだろう……絶対黒歴史だって……」
俺の一言一句を聞いても怒らないで楽しそうなリツキを見ていると、お願いごとをして良かったなって思う。
神様、もし本当にいるのだとしたら――
俺にイケメンをプレゼントしてくれて、ありがとうございます。
最初のコメントを投稿しよう!