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大学時代の俺は夜更かしが多く、日付が変わってからベッドに入ることがほとんど。
しかしその夜は珍しく、日付が変わる前どころか10時には横になり、しかもすぐに眠りに就いていた。
ただし、朝まで快適な睡眠というわけにはいかず……。
大きな叫び声を耳にして、まだ暗いうちに叩き起こされてしまう。
「ただいま!」
夢の世界から引き戻されるほど「大きな叫び声」だ。
反射的に枕元の時計に目をやると、蛍光塗料の塗られた長針と短針が指しているのは2時過ぎ。まだ周りは暗いから、昼過ぎまで寝過ごしたはずもなく、午前2時の方なのは間違いない。
ちょうど「草木も眠る丑三つ時」と呼ばれる時間帯だった。
そして何よりも驚いたのが、声の聞こえてきた方向だ。外を歩いている人が発した声ならば窓越しのはずなのに、反対側から聞こえてきていた。
俺が住んでいる302号室の中、正確に言えばそのキッチンスペースからだったのだ。
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