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「一応聞くがそれってお前が浮気をしたほうなのか?」
「ちゃうわい! あたしはその好きな人とずっと会ってなかっただよ。ただ、心にそんな人がずっといただけ」
少しこんがらがった彼は一度整理するように時間を使う。
その間彼女は遠くを眺めていた。それは今の状況を懐かしんでるみたいだけど、そうでもないみたい。彼女の笑顔は少し引き攣っている。
「つまり、その恋人が思い出の人より好きになれなかったのか?」
やっとの彼の答えに「おお! 正解!」なんて言うけど、彼女は自分でも今気づいたみたいだった。
「厄介なことだな。んで? それからどうしたんだ? その想い人さんには恋を告げたのか?」
「あほう! ずっと会ってなかったんだもん、連絡なんか付くか」
「そうだったな。じゃあ、これからもし、会うことでもあったら、告白するのか?」
聞きすぎな気がするのは気になってるからだろう。昔ばなしで辞めておけば良かったのかもしれない。今更戻れないから。
「そうなんだよねー。どうしよう? 告白したほうが良いのかな?」
「そんな相談をされても困る。だけど、うーん、気持ちの整理がつかないなら言わないと、じゃないか?」
ずっと見詰めていた。この時彼がどう答えるかが気になって。もう視線は移らない。
「なら、言う!」
「そうしなさい。骨なら拾ってやるからな」
「うん! 貴方が好きです!」
「そうだ。その意気だ」
「好きです。好きなんです」
「ストレートで良い告白だと思うよ」
「好き、好きなんだ。ずっと好きだったんだ」
「わかったって! それはちゃんとお前の相手に言え」
あまりに彼女が「好き」と続けるので彼は怒ったみたいに言い返して振り返るが、その時に彼女は涙を流していた。
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