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翌日、学校は休みとはいえ、いつまでたっても起きてこない那月を心配し、穂積は寝室に様子を見に行った。
キングサイズのベッドの端に丸まって眠るのは貧乏性が抜けない那月の癖だ。
穂積はベッドの端に腰掛け、長い指で那月の前髪を掻き上げ、耳元に優しく囁いた。
「お寝坊ウサギ、もう昼だよ」
いつもだったら寝ぼけながら穂積の首に両腕を絡めてくる那月が、今日は目を閉じたまま険しい顔をしている。
「那月?」
「……頭、痛い」
「二日酔いかな。昨日初めて飲んだんだったね」
穂積の言葉に驚いて那月は重い瞼をなんとか開きながら尋く。
「……二日酔い?誰が?」
「那月が」
「俺?」
那月は眉を寄せたまま微動だにしない。
「もしかして、覚えてない?」
那月が黙って頷くと穂積はがっかりした様子で呟く。
「……あんなに色っぽかったのに」
「誰が?」
「那月が」
「…………」
那月はますます険しい表情をしてポツリと呟いた。
「だからこんなに腰が怠いんだ……」
「……ごめん」
「俺、お酒飲んで酔っ払って……何したの?」
何って、ナニだけど……とは言えず、穂積は言葉に詰まる。
「……俺、なんか……酷いことした?」
「酷いっていうか……凄く、悦かったんだけどな……そうか、まったく覚えてないのか」
しょんぼりしてしまった穂積を見て那月は遠い目をした。
ーー俺、何したんだろ。
それにしても頭がガンガン痛くて那月はこめかみを手で押さえながら辛そうな顔をした。
「那月、待ってて、いま水を」
穂積はそう言って1度部屋を出て行き、ミネラルウォーターのペットボトルを手に戻ってくる。
「頭痛薬持ってきたから飲んで」
「ありがとう」
那月は薬と水を飲むと再びベッドに横になった。
穂積はベッドの端に座り、那月の額にそっと手を当てる。
「気持ち悪さはない?」
「うん……」
那月が泣き出しそうな顔をするのを見て穂積は優しく声をかける。
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