夢から醒めても。

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 深夜、穂積はふと目を覚まし、隣に眠っているはずの那月がいないことに気づき、慌ててその身を起こした。  那月は窓辺に立って空を見上げていた。  蒼白い月明かりに照らされた細い後ろ姿は絵画のように美しいが、同時に胸が苦しくなるくらい儚く悲しげに見えた。  穂積は静かにベッドを出て那月に歩み寄ると後ろからそっと抱きしめた。    那月の細い肩は微かに震えていた。  穂積は黙ったまま腕の中の艶やかな黒髪に唇を寄せる。  「……なんであんなになるまで気づいてあげられなかったんだろ。もっと早く……わかってたら……」  穂積は那月を強く抱きしめながら耳元に静かに囁いた。  「君のせいじゃないよ」  「俺、母さんに優しくなかった」  「そんなことない」  「ほんとは……もっと……優しくしたかった」  那月は自分を抱きしめている穂積の腕に震える手で触れた。  「君の優しさはちゃんとお母さんに伝わってるよ」  「でもっ……」  穂積はさらに強く那月を抱きしめるとその頬に後ろからキスした。  「これからたくさん話をして、思いきり優しくすればいい。君がそばにいてくれるだけでお母さんは嬉しいはずだから」  「……穂積さん、俺、怖い……母さんが……いなくなっちゃうなんて……そんなの……」  那月は涙に震える声で呟きながら穂積の腕をギュッと掴んだ。  「大丈夫。俺がずっとそばにいる」  穂積は那月の体を反転させ、見つめ合う形になると白い頬を濡らす涙にそっと口づけた。  「君を絶対ひとりにしないから」  「……穂積さん……」  涙に濡れた瞳が見上げると、穂積の大きな手が那月の頬を包み込み、深く優しいキスをした。    「……ん」  穂積は口づけを繰り返し、那月を抱き上げるとベッドに戻った。    「何も心配いらないから安心しておやすみ」  逞しい腕に抱きしめられ、耳元に優しく囁かれて那月は目を閉じる。  「君が寝つくまでこうしてるから」    額を合わせ、体を密着させた状態で穂積は長い指で那月の髪を撫でた。  那月は愛する人の体温と指から伝わる優しさを感じながら深い眠りに堕ちていった。
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