黒猫と白ウサギに変身してみた。

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 「その衣装、すごくいい素材だし可愛くて凝ってるよね。通販の安いやつじゃないんでしょ」  ワインのグラスを片手に穂積が言うと澪が答えた。  「右京たちが用意してくれたんだ。触り心地が良くて可愛いから気に入ってる」  「ふたりともよく似合ってる」  悟はそう言って澪に笑いかけた。  「澪が黒猫で那月が真っ白なウサギってところがいいね。対照的な色だし、並んだ時に映える」  「那月ウサギのポケットからフェルトのにんじんがはみ出てるのがツボかな」  皆が盛り上がる中、やけに静かな那月に気づき、穂積が声を掛ける。  「那月?ずいぶん静か……あれ?」  言っているそばから那月が隣に座っている穂積に体重をかけてドーンと寄りかかってくる。    「……穂積さぁん、このシャンメリ……すっごく……効くね……」  「……那月、それ」  「シャンメリーじゃなくて白ワインじゃ……」  那月はいつのまにかシャンメリーのボトルと白ワインのボトルを間違えてグラスに手酌していたようで、とろんとした顔で笑う。  「もしかして那月」  「お酒飲むの初めて?」  皆が那月に注目する中、当の本人は体をゆらゆらさせながら潤んだ瞳で穂積を見つめた。  「……なんか〜ふわふわするゥ……」  「これは完全に酔ってるね」  「ほっぺた桜色!ほろ酔いウサギ、超可愛い!」  澪はそう言ってスマホで那月を激写し、カラカラと笑う。  「……いや、おまえも酔ってるんじゃないのか?」  悟がそう言って澪の額に手を当てると燃えるように熱かった。  「俺がシャンメリーなんかで酔うわけないじゃん、悟さんてば〜」  「……おまえは最初からワインだっただろう。弱いくせにペースが早かったからだ。もうそのくらいで……」  悟がグラスを取り上げようとすると澪は背を向けて阻止した。  「やだ、まだ飲む!唐揚げも、山盛り食べるんだから……那月が揚げた……美味しい唐揚げ……ね、那月ぃ?」  「……那月はもうおねむだよ」  澪が振り返ると那月は真っ赤な顔をして目を閉じてニコニコしたまま穂積に寄りかかっていた。  「え〜?もっと一緒に飲もうよ那月ぃ」  とか言いながら澪も気持ちよさそうな那月の寝顔につられるように目を擦り、蕩けた顔をして悟の首に両腕を絡めてしがみついた。  「悟さん、俺も……抱っこ……」  ほぼ同時に酔い潰れた黒猫と白ウサギを見て穂積と悟は表情を崩しながら顔を見合わせた。  「やれやれ、潰れるタイミングまで一緒とは……とことん可愛いね」    
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