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右京が手にしていたのは「焼くだけ簡単、出来てるクッキー生地」というもので、文字通り棒状に出来上がっている生地を伸ばして好きなクッキー型で抜き、オーブンで焼くだけという商品だ。
しかも1袋にバター、チョコ、ストロベリーの3種類の味が入っているという優れものだ。
3人で手分けしてキッチンを掃除し、右京に見ていてもらいながら澪は出来上がっている生地を木製のめん棒で伸ばし、型で抜き、オーブンの余熱時間や温度を右京に確認しながら自分だけの手でクッキーを焼きあげた。
「……出来た」
焼き上がったクッキーは所々小さなヒビが入ったり、端が欠けたりしているものもあったが、前回に比べたら格段に綺麗に出来た。
「悟さん、見て!これ何かわかる?」
手にしたクッキーを見て悟が「ツリーだろ」と答えると澪は眼を輝かせて頷いた。
「じゃあこれは?」
「人型だな」
「そう、ジンジャーマンだよ!」
「可愛く出来たな、澪」
悟が褒めると澪は照れくさそうに頬を染めながら「アーン」と言ってジンジャーマンの形のバタークッキーを悟の口元に持っていく。
悟は言われるままに口を開け、クッキーを受け取るとよく噛んで味わいながら食べた。
澪は祈るような気持ちでその様子を見守る。
「美味い」
そのひと言と笑顔を見て澪は「やった〜!」と言って悟に抱きついた。
少し離れたところで見守っていた右京はうんうんと頷きながらハンカチで目元を押さえたのだった。
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