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帰宅部を作ると言い出した翌日、ミノべーはB5サイズの手帳を僕の前に広げた。何やら悩んでいる。
「七月がヤマだな。忙しくなる」
「何が?」
「帰宅部がだ」
仕方なく黙って頷いた。
手帳には、びっしりとスポーツの名前が書かれていた。
・サッカー1回戦
・剣道1回戦
・ハンド2回戦
「何これ?」
「インハイの日程だ。競技によっては2回戦からの日程が分からないものもある。当然、重なる日も出てくる。目利きとともにニッシーの協力が必要だ」
そうか、そうだね。
なんて言えない。
世界中の名探偵に依頼して、果たして半数がこの謎を解けるだろうか。
「ミノべー、何やるのかさっぱり分かんない。小学生に教えてあげるんだと思って説明してほしいんだけど」
そう単刀直入に聞いた。
「一度、話してくれたよな。ニッシー」
「ん?」
「ニッシーはサッカー頑張ったけど報われなかったって」
ミノべーは神妙な面持ちで俺を見た。
「……ああ。中学の部活のこと?」
「そうだ。俺はそれを聞いて悲しかった。全員がレギュラーになれはしないが、努力は報われるべきだ。それがスポーツの一番美しい側面だ」
「うん」
「最後でもいい、報われるべきだ」
「うん」
「それを俺たちは手助けする。きっと、いいことになる」
やっぱり何が何だかさっぱりだ。
ミノべーの謎だらけのブラックホールに吸い込まれてしまう。
「だ、か、ら。何をしようとしてるわけ?」
「それは、一緒に活動をやってれば分かるようになる」
はいはい、そうですか。
僕は諦めて帰宅部部長の指示を待つことにした。
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