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地球が消滅した、と信号を受け取ってからどのくらいの期間が経っただろうか。一年、いや、二年だろうか。
何年も前から一人で宇宙船に乗って旅をしている僕は、久しく生きて喋る生き物を見ていない。最初は人が住める星を探すのが目的だったような気もするが地球が滅びたのなら、そんなことは、もうどうでも良いことだ。
宇宙船の丸窓から見る景色に青い星はない。地球は青かったと誰かが言ったけれど、消滅した瞬間の地球はずっと青かったのだろうか、と思う。もしかするとオレンジ色だったかもしれないし、ピンク色だったかもしれない。そんなこと、本当に今となってはどうでも良いことなのだけれど。
地球に居るときに最後に見た空は紫とピンクの色が混ざった夏の空だった。誰に送り出されるわけでもなく、ただ只管に一人で重力に堪えていた。大気圏に出て、下に広がる空を見たら、そこにはもう紫もピンクも存在していなくて、青い空が広がっているだけだった。地球はやっぱり青かった。
「宇宙船0HA-Y01001のおはようプロトコルを開始します。おはようございます、ご主人様」
宇宙には朝も夜も存在しない。宇宙船の移動する場所によって朝も夜も存在しているのかもしれないが、宇宙にはそもそもその概念がない。だから、僕はその概念をつくることにした。
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