愚考実験

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 「あたしら、意外と考え方が正反対なんだね」  「そうみたい。でも、考えが真逆でも、こうして仲良く受験勉強している」  それに、仲が良いからこそ、異なる考えを許容し合うことができるのではないだろうか。一定の信頼関係が無ければ、互いの意見を許容し合うのではなくその場の雰囲気に合わせるだろう。少なくとも、私は相手の意見に合わせると思う。  「ねえ、知夏」  「なにー?」 すっかり休憩気分の知夏に、私は少しばかりの本音を話す。  「一緒の大学、行けるといいね」  成績は私の方が優秀だ。おそらく、知夏と私が同じ大学に行くことは叶わない。それくらい学力は離れている。私が志望校のランクを下げれば別だが、家族がそれを許さないだろう。諦める。それが賢いやり方だ。でも、愚かな考えについ縋(すが)ってしまう。だから今もこうして、知夏の勉強を見ている。知夏も私と同じ大学を目標にしている。そこに私との友情が含まれているかはわからない。  私の言葉を聞き、一瞬、目を丸くする知夏。それからニカッと歯を見せて笑った。  「うん。頑張ろう」  やる気になった知夏が勉強に戻る。集中している。私も黙り、再びノートを開いて目線を移した。  やっぱり賢子なんて名前は、私には似合わないな。  完
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