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……二人してなに平然と宙に浮かんでんの?
いや、俺たちも散々飛び回っていたから人のこと言えないけどさ。
でも少し考えて見て欲しい。
俺たちは「魔法少女」だ。魔法少女だから飛んだり浮いたりするのは普通の事だから、別におかしい事は何も無い。
けれどあちらは、何処からどう見ても普通の男子高校生に、薬屋に出てくる紫髪の宦官みたいな超絶イケメンが浮かんでいるのだ。どう見てもおかしいだろう。
「…………マズいな」
すると、窪みの奥でイナバがボソリと呟いた。
何がマズい? 言ってみろ。……いやホントに。冗談抜きで。
不安になるからそういうのは具体的に言おう?
「何がマズいんだよ……! 何だよあの二人? 明らかにこれまで戦ってきたどのモンスターよりも厄介だぞ……!?」
別に構えようとはしてなかったステッキを、前方に構えて膜を展開する。
初めてダンジョンに潜った時、カラダが勝手に動いた時と似ていた。
どうもこのカラダ、危機察知・感知能力が以上に高いらしい。
それを、俺という魂がデバフをかけているせいで効果が薄くなっている。
その結果、いつでも自動的に反応してくれる訳じゃないんだが……どうも今回は別のようだ。
「なんかバリアみたいなの張られちゃいましたね。どうします?」
「ま、警戒されるのは当然よねぇ〜。方や男子高校生、方やイケメンだもの。そんなのが宙に浮いた状態で声かけてきたら誰だってそうするわ」
ステッキを前方に向けたまま警戒していると、女性的な口調をしたイケメンが、腰に手をあてながら声を挙げた。
「──あなた、クリムゾン・ブロッサムちゃんよねぇ? はじめまして☆ 私、モデル兼ダンジョン配信者をやってる神崎紫音って言いま〜す! よろしくねぇ〜☆」
「え? えっ、あ、はい……よろしくお願いします……?」
唐突に挨拶されて変な声が出てしまった。
神崎紫音……なんか聞いた事のある名前だな。
一応は同業者だから、情報を仕入れている時に知ったのか?
「それと、こっちの冴えない男子高校生は佐崎悠真クンで〜す☆ 最近彼女とデート行けてないからってすっごく機嫌が悪くて、組まされてるこっちの身にもなって欲しいって感じで〜す!」
「シオンさん、それ以上踏み込んだ話するんならキレますよ」
「あらごめんなさい」
「………………」
……なんか今、この状況下で一番聞きたくない名前したヤツいなかった???
俺は、全身から汗が吹き出すのを感じて後ろを振り向く。
するとイナバも同じ気持ちだったのか、サウナにでも入ったのかと錯覚するレベルで汗を流しながら口を開いた。
「……佐崎悠真。去年の5月頃に覚醒したとされている、現代最強のSランク探索者だぴょん」
言いながら、傍らにいたレイニアとライラの二人を肩に抱えつつ、直ぐにでも逃げられる準備を整える。
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