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佐崎悠真については、度々イナバから話を聞いていた。
俺と同じダンジョン配信をしている同業者なのだから、情報を仕入れるのは当然の事だ。
まぁ配信については、自分のダンジョン配信や学校、それと12年のあいだに溜まっていたやりたいゲーム、読みたい漫画やラノベを消化する毎日を過ごしていたため全く見ていなかった。
情報は仕入れた。確認はしていない。
典型的なダメ男のソレだった。
確か一度だけチラッと見た事があるけど、それっきりの筈だ。
恐らく心の何処かで「彼女と一緒に配信とはいい身分だなぁ!」という醜い感情が顔を出したんだと思うけど……。
「……そうだとしても、少しくらいは確認しておけよ俺」
俺はバリアから飛び出して、二人のいる所まで上昇する。
何故、佐崎悠真がここに来たのか。
理由についてはまだ確認してはいないけど、Sランク探索者が、わざわざこんな所にまで足を運んで来た理由なんて、聞かなくても察している。
「──もしかして、私のお兄ちゃんに用事ですか?」
「そう。話が早くて助かるよ」
ステッキを構え、二人の動きを注意深く観察する。
そんな中、佐崎悠真は何処からともなく取り出した刀を此方に向け、表情を一切変えずに告げる。
「そこに隠れている赤里イナバさんの拘束。そして、クリムゾン・ブロッサム改め山田桜香さん。アブソリュート・ゼロ改め冬木零菜さん。あなた達二人を保護しに来たんだ」
「……イヤって言ったら?」
「……? 拒否権なんて無いけど」
──なるほど。
これは、もしかしなくても今日一日だけであと数回は死にそうだな。
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