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「……特殊能力/制御空間、起動」
──と。イナバから伺っていた話をちょうど思い出したところで、彼は魔法では無く能力を発動してきた。
しかも雰囲気的に「空間操作魔法」のソレだし。
おい、何が無属性魔法だよ。
相手が使ってきたの、魔法じゃなくて能力なんですけど?
脳内でイナバにツッコミを入れていると、その間に展開していたバリアが破壊されてしまい、目の前から刀身を翻した状態で振り上げる佐崎の姿があった。
俺はそれをガンマブレードで受け止め、アルファストームを至近距離で発動する。
「あっ、それ配信で見た魔法だ」
人に向けていい魔法なのか?と、疑問に思ったのも束の間。
発動したはずのアルファストーム──無数のハート達は、何故か撃ち出される事も無く不発に終わった。
訳がわからず再度発動しようとするが、一向に放たれる事は無かった。
その上ガンマブレードも消えており、俺はもはや「魔法が使えない魔法少女」になっていた。
何故だ……? 何度か死んだおかげで、肉体も再生したり魔力も回復した。
その上魔力総量も上がっている、それなのに。
「クリブロちゃん。やめといた方がいいわよ? 多分だけどもう、あなたがこの場所で魔法を使える事は無いわ」
「……それって、どういう?」
ステッキを縦や横に振る。
いつもならこれだけで魔法が発動出来ていたのに、今ではウンともスンとも言わない。
魔法少女のステッキが壊れる事ってあるのか?なんて考えていると、シオンと呼ばれていた男?が意味深な事を告げた。
「さっき彼が言ったでしょ? 制御空間起動って。彼のこの特殊能力はね、彼が彼が設定した条件を空間に付与する能力なのよ」
「……えっ」
「まぁそんな反応にもなるわよねぇ〜。例えばだけど、今私たちのいる地点から半径約5、6メートルの範囲を指定して【魔法の発動を不能にさせる】という設定を空間に付与したとする。するとあら不思議! 魔法が使えなくなりま〜す! ……ってなる、クソチートスキルなのよ。品が無いわよねぇ〜」
「シオンさん、それ本人がいる前で言います?」
っていうかあんたが言うな──とため息をつく佐崎は、さっきまで握っていた刀を何処でも無い空間に放り捨て、俺に左手を翳した。
その後、全身を縛られるような感覚が襲い、身動きが取れなった訳だが、とりあえず一つだけ言わせてくれ。
「──クソチート能力すぎるだろッ……!!」
「あはっ、クリブロちゃんったら、口調が男っぽくなってるわよ?」
佐崎の隣で手を叩いて笑う紫髪の男。
さっきからこの人、普通に宙に浮いてるし佐崎の能力効いていないっぽいし……。もしかして、この人も……?
「……もしかせずとも、あなたもSランク探索者なんですか……?」
「あら、ご存知頂けてなかった感じ? まぁ女子小学生はターゲット層じゃないから当然かぁ」
特にこれといって肯定するでも否定するでも無く、Vサインを送ってくる。
『……イナバ。これ、どう足掻いても無理だわ……』
『奇遇ぴょんね。ボクもちょうどそう思ってたところだぴょん……』
諦めたら試合終了ですよ──頭の中で安西先生がそう言った気がするけど、それに対して無職おっさんモードの俺は告げる。
『無理なもんは無理っすよww』と。
完全に戦う気力を無くしてしまった俺は、変身を解き降伏のポーズ──両手を上げる──をする。
先ほどライラにぶつけた「ハートブレイク」魔法ならどうにかなるかもしれないけど、通じなかった場合のリスクや、回復した魔力を失うと考えたら、実行出来なかった。
まぁ、二人とも無理やりにでも連れていくタイプじゃないだけマシか……。
とは言え、イナバは「拘束」って言ってたし、俺たちは「保護」されるらしいけど、その後はどうなる?
ただでさえ配信出来ていないのに、この先配信活動なんか出来るのか……?
そんな先の見えない未来に不安を抱いていると、地上でなお燃え続けている黒炎の中で、何かが蠢いた様な気がした。
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