7人が本棚に入れています
本棚に追加
第73話「久しぶりの邂逅Part2」
【──久しぶりだな、オウカ。では早速、以前私が出した試練についての進捗を聞こうか】
いつもの通り、俺の声が耳朶を打ち、ゆっくりと目を開く。
毎度毎度、こうして唐突に呼び出してくるのは勘弁して欲しい。
というか、今日のは本当に急すぎるだろう。これだと俺が急に意識を失った感じになっちゃうだろ。
レイニアやライラはともかく、トバリはこの事をよく知らない。
今後の活動について話し合っている時にうっすらと話してはいるけど、恐らくトバリもアビスもよく理解できていない筈だ。
そりゃ「レベル5ダンジョンにこのカラダの元魂さまがいるんですよ〜」なんて話したところで通じる訳も無いからな。
ともかく、起きた後ちゃんと説明しないとな。
等と、この邂逅を終えた後の事を考えながら、俺はいつもの如く真紅に悪態をつこうとする。
「……あの、真紅様。いい加減こうして急に呼び出すのやめませんか? 俺にも一応用事があるんですけ……ど……」
どうせいつも通り、九つの首を持つ竜の上で偉そうに鎮座してるんだろう? ……なんて考えながら視線を向けると。
【用事? ……ああ、あの「ドウガヘンシュウ」というヤツか。あんなもの用事に入るか。聞いた話じゃ、そのヘンシュウ作業とやらは企業や個人に委託できるそうじゃないか。ならばそちらに委託した方が的確だし、何より「キリヌキシ」なる者がいるらしいな。であればそれに……】
「いやいやいやちょっと待って下さいよ!?」
今現在の彼女──否。彼の姿を認めた俺は、淡々と話を続ける彼の話を遮った。すると彼は【なんだ?】と不機嫌そうに睨みつけてくる。
いや、「なんだ?」は此方の台詞なんですけど……!
「……真紅様。少しお聞きしたい事があるんですが」
【だから何だ? 何をこんなに困惑している?】
「……それ、本当に俺のカラダなんですか?」
そう尋ねると、真紅はようやく理解した様子で、俺のブヨブヨでだぷんだぷんなだらしのないカラダを……いや。
……めちゃくちゃに引き締まった、バッキバキの肉体に手を添えて、【この肉体のことか?】と口にした。
「そうですよ! 何なんですか、っていうか誰ですかそれ!? 本当に俺のカラダなんですか? それとも別の誰かですか!? 浮気したんですか!?」
【気色の悪いことを抜かすな豚。……って、今は豚では無かったな。ではハゲ】
「ぐっ……! ちょっ、その呼び方はやめて下さい……。結構ガチ目に傷つくんで……」
ハゲ呼ばわりされ、心に大ダメージを負った俺は、とりあえず俺の事は「オウカ」と呼ぶように促した。
それに賛同する真紅は、鍛え上げた肉体のままに九頭竜の上で足を組み、俺を見下ろしていた。
顔や頭はそのままだから、カッコいいかと問われたら何とも言えないけど、スタイルは良いし、顔つきも全然違う。
一体、何があってあんなカラダになったんだろうか。
【……端的に言うと、貴様の肉体から魔力が通じるようになっている。だから私はその魔力で肉体改造を施したという訳だ。まぁ、単なる暇つぶしだよ】
……暇つぶしねぇ。果たして本当にそうだろうか?
確かに、今俺の魂が宿るこの肉体は、「死ぬ」事で魔力量が大幅に増加している。それもあってか、最近ではよく真紅に呼び出されるようになっている。
死に近づけば近づく程、真紅という存在に近くなっていく。そんな気がしていた。
結論が出ないから何とも言えないけど、少なくとも真紅が俺の肉体を改造した事には、何か別の理由があるようにも思えた。
【それで、進捗は? さっきから聞いているだろう】
……けど、真紅はその点について詳しくは話してくれないらしい。こうした独白は筒抜けのはずなのに全部無視か。
「進捗と言ったって、俺の目を通して全部見てきてるんでしょう? それに何故か動画編集の事や、企業や個人への動画編集の委託についての話も知っているし。何か別の方法を取る事ができるようになったんじゃないですか?」
俺の問いに対し、真紅はそっぽを向いて舌打ちをする。なんてあからさまな態度なのだろうか。何かを隠してる事がバレバレじゃないか。
「まぁ、俺のカラダを使って何をしようとしているのかは知りませんけど、俺の仲間達に危害が加わるような事はしないでくださいよ?」
俺はそう釘を刺しながら、俺の目を通して知っている筈の情報を語った。
すると、ある態度話を聞いた時点で、真紅は何やら考える素振りを見せる。
最初のコメントを投稿しよう!