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第78話「緊急コラボ企画☆マジカル☆ガールズ+由依!」①
──2032年5月7日。12時30分頃。
俺たちマジカル☆ガールズ(全員参加)は、絶対にバレないよう変装し、九条由依がよく目撃されると言う渋谷に来ていた。
「……なんか、ここに足を運ぶのも随分と久しぶりな感じがするなぁ」
バレないように着込んだ(というよりライラに無理やり着せられた)黒いテーラードジャケットとミニスカートに身を包んだ俺は、元々あった筈の渋谷スクランブル交差点に聳え立つ巨大な塔──【九頭竜】の関門所を見上げながら呟いた。
12年前に起きた【1.20 東京都渋谷スクランブル交差点巨大迷宮災害】。
それによる都市の被害状況は余りにも大きく、復興には30年以上はかかるだろうと言われたらしい。
しかし、今では俺がまだ無職のおっさんだった頃と同じような賑わいを見せている。
そして皆が皆、聳え立つ塔の事なんて一切気にしてない素振りで、あの時とは違った普通の生活を送っている。
その事実に、俺は何とも形容し難い気持ちになり、九頭竜の奥底にいるであろう元魂様の事を思い浮かべる。
「ちょっと〜おじさん? なに帽子とマスク外してんの〜? ちゃんと変装しないとダメじゃん。なに? それともコドモの言いつけも守れないくらい頭ヨワヨワなの〜?♡」
──と、少しだけ黄昏ていると、背後から派手目な服に身を包むライラから、無理やり黒キャップと黒マスクを取り付けられる。っていうか誰が頭ヨワヨワだ。
「……いや。確かに変装していこうって言ったのは俺だけどさ。流石にやり過ぎじゃないか? 全員、ほぼ同じ格好じゃん。上から着てるものが違うくらいで」
「そ、そうよ! なによこの頼りないスカート、っていうかこれスカートなの!? も、もうほぼ足出てるじゃないっ!」
「そ、そうでござるぞ! こ、こんなのハレンチ! ハレンチでござる!」
「いや、トバリちゃんに関しては魔法少女服の時点でだいぶハレンチじゃん」
「ぐぅっ!?」
俺の抗議の声に対し、賛同する二人の魔法少女。
しかし一人に関しては完全に論破されてしまったらしく、その場で四つん這いになって落ち込んでいた。おい、その体勢だとパンツ見えるぞ。
……それにしても、あれだな。余計なこと言わなきゃ良かったな。
俺はため息をつきながら、わーわーと騒ぎ立てる少女たちを尻目に、昨日のことを思い出す。
──昨日。「九条由依」とコラボしよう発言をした俺の行動は早かった。
すぐに九条由依に「コラボしませんかっ?☆」DMを送り、彼女から「お、おおおお願いしますっ!」という返事を貰い、すぐにコラボしよう!と力押しでコラボの予定を取り付けた。
まぁ、色々と確認しなければならない事項が多いんだけどな。とは言っても今の俺たちには手段を選んでる余裕もなさそうなので、そこら辺は再びイナバに無理をしてもらう事にした。
すると、俺の余りにも早すぎる行動にレイニアもイナバもドン引きしていた。
「こういう時だけは早いよね」みたいな含みのある視線を感じたが、それでもコラボまで取り付けたのだから文句はあるまい。
とまぁコラボする事が決まったので、あとはメンバーにその事を伝える必要がある。
俺はすぐに他の二人──ライラとトバリに連絡を入れた。
すると、ライラからはすぐに「コラボ!?する!!」という返信が返ってきた。
ついさっき怒って帰った筈だけど、九条由依とのコラボのおかげでその点についても許して貰えそうだ。
──等と考えていると、俺の思考が読めるのか、レイニアが冷めた視線を送ってきたので、咳払いをして誤魔化した。
それからすぐにトバリに連絡を入れると、「九条由依……???」と、偉人の名前を唐突に吐かれたようなリアクションを取られてしまった。お前はもう少し世間に目を向けろ。
あとお兄ちゃん、俺たちのファンであるのは嬉しいんだけどさ、あなたもちゃんと他の事に目を向けてくれ。君の妹、影響受け過ぎて世間知らずの女の子になっちゃうから。
まぁ、そこは俺がおいおい教えていくとして。九条由依を知らなかったトバリには、一先ず「仕事で人に会うんだ」と言ったら了承してくれた。大丈夫かこれで?
ともかく、これで一応コラボが決まった訳だが、俺たちの正体を知られる訳にはいかないので、変装をする必要があるという話になった。
イナバが尽力してくれたおかげで、俺たちの素と魔法少女時とは認識が異なるようになっている。
なので魔法少女状態で会うのが一番手っ取り早いと考えたが、余りにも目立ちすぎる。
とすればどうするか。
それをレイニアとイナバの三人で考えている時、帰った筈のライラがトバリを無理やり連れてきてこんな事を言い始めた。
「せっかく変装するんならさぁ、おそろコーデしない?☆」
……と、そんなやり取りが繰り広げられ。
ライラ提案の「おそろコーデ」をした結果、4人とも足もろだし寸前のミニスカートを履き、上に着る服だけ別、というかなり攻めた変装をするハメになった。
「変装」と言うにはあまりにも目立ち過ぎている気がするが、よくよく思えばゴールデンウィーク中、ダンジョン配信ばかりで全然遊べていなかったな。
だからあの時、ライラは怒ってしまったのかもしれない。
それを考えると、彼女の提案を無視する事が出来ず、大人しくミニスカートを履く事になったのだが……うん。
とりあえずミニスカートを履くのは今日で最後にしよう。
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