第79話「緊急コラボ企画☆マジカル☆ガールズ+由依!」②

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第79話「緊急コラボ企画☆マジカル☆ガールズ+由依!」②

 それはそれとして、だ。    こうしておそろコーデを決めて、【九頭竜】のある関門所手前でたむろしている俺たちは、待ち合わせまで時間があるため情報集めをする事にしていた。  故にこうしておそろコーデという名の変装をしている訳である。  まぁ結局、マスクや帽子で顔を隠したところで、滲み出る美少女オーラというか、明らかに普通では無い雰囲気を醸し出している俺たちはどこまで言っても他人の目を引いた。  多分、現界(アッシャー)魔法界(ブリアー)での魔力の違いというものを、探索者であるこの世界の住人達は本能で察知しているのかもしれない。知らんけど。  それと、情報集めとは言っても、そんな有力な情報が手に入るとは思っていない。  そもそも、メレフやサザキユウマが何処で何をしているのかわからない時点で探りようも無いだから当然であった。  けど、俺たちという存在そのものがエサとなりうるので、こうして集まっていればメレフ達が近付いてくるんじゃないか?とも考えていた。  その場合、ダンジョン外での戦闘になってしまう可能性があるので、そこは注意したいところだが……。 「……あっ! ねぇおじさん! あのひとじゃないの?」  あまり目立たないようにと、関門所周辺の建物の側で、身を隠すように固まっていた俺たちだったが、豹柄で派手目なジャンパーを着こなしているライラが、何かに気付いて指を指した。  するとそこにいたのは、スマートフォンを片手にキョロキョロと辺りを見渡してる九条由依の姿だった。  白袖のレーストップスにデニムのスカートを身につけた彼女の容姿は、まさに「清楚」そのものだった。     黒くて美しい髪を靡かせながら、何かを探すような素振りを見せているが、それがまた絵になっている。  GW中のコラボという事で、「急ではあるけど打ち合わせをして、その次の日に早速コラボ配信or動画を撮りましょう☆」というかなり無茶な要求をしていた。  なので俺たちは情報を集める事もそうだが、「こっちから提案しておいて遅刻する訳にはいかない」と12時には渋谷に到着し、あれこれと回っていた訳だけど……。  これは早めに待ち合わせ場所周辺に戻って来ておいて正解だったな。 「待ち合わせ場所は関門所前にある時計柱で、待ち合わせ時間は何時だったっけ?」 「……13時」 「ってことは、九条由依は集合時間の30分も前に到着したという事でござるか? 引くほどイイ娘でござるな!」 「なんで引く必要があるのよ」  黒を基調ときたパンキッシュなパーカーを身につけるトバリは、関心するように頷き、それに対してレイニアが冷たいツッコミを入れた。  けど確かに。  かなり無茶な要求をしておいて、こっちはただサザキユウマが何処で何をしているのかを知りたいがために、こうしてコラボを持ちかけている。  向こうは当然そんな話は知らない。しかし彼女は、DMでのやり取りでしかわからないが、どうも俺たちのファンであるようだった。  文面から彼女の興奮が伝わってくるというか、此方がかなり無茶な要求をしているのにも関わらず、「大丈夫ですっ!」とコラボ企画を呑んでくれた。  もうその時点で「ええ子や……」ってなってたのに、指定時刻よりも30分前に来て待とうだなんて……。  ちょっといい子すぎないか? 「聞いた話じゃ、渋谷でよく買い物をしていると聞いたから、今日ももしかして買い物ついでに早く行こうってなったのかも……」 「なに罪悪感を感じて無理にこじつけようとしてんのよ。ああしてスマートフォンを見ながら周囲を確認してるって事は、こっちが指定した待ち合わせ場所を改めて確認する、そして私たちがいないかを探してるって事でしょう? 今さら悪気感じたって遅いわよ」  俺が深く帽子を被り直していると、レイニアから冷静なツッコミが返ってきて閉口する。レイニアの言う通りだ。    こっちの都合で「コラボしませんか〜」と声をかけておいて、罪悪感を感じたからやっぱ会うのやめる──なんて事は出来ないし、そんなクソみたいな対応を取るつもりは微塵もない。  ただ。もし彼女とのコラボ中にメレフたちが襲ってきた時のことを考えると色々と足がすくんでしまう。  これも罪悪感からくるものだろうが、ここまで来ておいてやめる選択肢はあり得ない。  俺は一度深く息をつき、レイニア達の方を見る。 「……俺たちの目的。コラボ配信や動画撮影をするのももちろんだけど、第一優先事項はサザキユウマの情報だ。彼が今どこで何をしているのかを突き止める必要がある。彼女がそれを知っているかはわからないけど、何としてでも彼の居場所を突き止めよう」    俺がそう言い、三人が頷く。  それを確認した俺は、気を取り直して九条由依の元へと駆けてゆき──。 「あれっ、もしかして、九条由依さんですか!? うわ〜、ホンモノだぁ〜っ!」 「え……? って、ええ!? そ、その声、もしかして……!」  声をかけられ、驚嘆の声をあげる九条由依の表情は、驚きとは別に喜びや興奮がない混ぜになった顔を浮かべていた。  彼女の反応を見るに、どうやら本当に俺たちのファンなようだ。それを思うと心が痛むが、そうは言ってられない。  何としてでも、サザキユウマの情報を引き出してやる。
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