第二章 風邪

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第9話 それぞれのやり方  彼が指示してきた内容は俺に全くない知識で、こうして料理ができるのかと実験をするように作った。味見した感じ、上手くできている気がする。仕込みをして、ひとまず休ませる。自分で風邪薬を買っていたようなのでそれは飲ませておいた。 「これでいいか?」 「かんぺきです」  翌日。依頼人は起きるなり、食卓の上を目を輝かせて眺めていた。何度もこれを作ったのが俺か確認してくる。一口食べるたびに感謝を述べ、笑いかけてきた。数年分の感謝を一晩でもらった気がする。戦谷は薬が効いたのか、風邪の症状は治まっていそうだった。 「ばいばいのっく。また一緒に寝ようね」  でかいぬいぐるみを受け取り、カバンにしまってまた代わりに背負った。本当にそれ以外の荷物がないのか軽いリュックだ。 「おてつだいありがとうございました。ごはん、おいしかったです」 「そりゃよかった。アンタの言った分量だけどな」 「そうかもしれませんが、すごくおいしかったんです」  2人で依頼人の家を出る。彼は依頼人に好かれる素質があるようだった。だから多分、成績もいい。今日の依頼人が俺にも愛想良く接してくれたのは、戦谷がこれまで良い関係を築いていきたからだろう。でも俺も負けてはいられない。 「君がどうやって客を寝かしてんのか知らないけどさ、俺にも2位たる所以ってもんがあんのよ」 「そうなんですか。では、どうやっているんですか?」 「それは、君みたいなお子様にはまだ早い」 「?」  戦谷は、汚れを知らないただの子供だった。そして噂はいよいよ現実味を帯びている。彼はきっと薬を使わずに成績を出している。そうすれば支給されている薬はどうしているのか、深追いはしないことにした。
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