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「これ、何の匂いだっけ?」
女性を感じさせる芳しい匂いである。
聡は窓の外を覗いてみる。 すると、直ぐ傍で大きなキツネが聡に向かいお座りをしているのである。口にはピンク色の花を咥えており、その姿は妙に色っぽい。
「昼間のキツネか?」
そう思った瞬間である。心地良い香りが鼻を擽り、聡はその匂いから離れたくない衝動にかられ始めたのである。
そして、その衝動が間も無くしてほろ酔い気分に変わり、更にその香りを嗅ぐほどに深く酔いしれて行くのである。
聡はその香りに釣られて、玄関に向かてっしまう。
「聡さん何処に行くの?」
愛子がそう聞くが、
「ちょっと捜して来る」
聡は虚ろにそう応えるだけである。
聡が外に出ると、そこには色白で姿勢の良い聡好みの女が立っいた。浴衣姿の良く似合う一見清楚な女である。
聡は当然の様にその女に手を引かれるままに歩を進めて行く。
何か戻らないと行けない気もするが脚も心も言うことを効かない。そのまま女に導かれてしまうのである。
一方、三奈美の警察への電話を見守っていた愛子も電話が終わると直ぐに聡を追って玄関を出るが、既に聡の姿は見当たらない。
「聡さん、何処に行ったんだろう?」
愛子の不安は募って行く…
聡は夢心地の中で高揚感を感じ、沸き立つ欲望が止められなくなって行く。歩きながらも、つい隣を歩く女に強く体を摺り寄せてしまう。
本当は今にも押し倒したい気持ちなのだが、若干残っている理性がそれを踏み止まらせているのである。
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