もしも待っていてくれるなら

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もしも待っていてくれるなら

「ただいま」 誰も居ないのに、 何で私はいまだにそう言って 部屋のドアを開けるんだろう。 黙って、 手紙さえ書かず部屋を出てきたのに、 あなたが待っててくれるかもしれないなんて、図々しく期待してるからなのかな 今日、髪を切ってきました。 あなたは、 長い髪を 後ろで結んだのが好き って言ってたのに。 ごめんね。 一歩踏み出すために 自分で見える形にしたかったの あなたに出会う前は、 髪を伸ばしたことがなかったし また、髪が長くなる頃までに 自分が成長できるように。 それでも、鏡に映る、 髪の短くなった自分を見たら、 また泣きそうになってしまいました。 だめね。 一人きりになっても 相変わらず、 泣き虫は直っていません。 あなたと出会ったころは、 いつも笑っていたはずなのに、 「君の笑顔が好きだよ。」って あなたも言っていたのに。 いつの間にか、 だんだん 泣き虫になってしまって 弱くなってしまった私。 あなたと出会う前は、 1人でも平気だった。 1人でも楽しく過ごせていたし 未来の夢もあったから。 でも、あなたと出会って あなたのことを 好きになればなるほど 無理だと分かっていても 会いたいとあなたを困らせたり 会えば わがままばかり言ってしまったり。 私はそんな人じゃなかったはずなのに どうして、 こんな風になってしまったんだろう。 あなたの愛情を試していたのかな。 そうだとしたら、なんてバカな私。 私が出ていったのは、 あなたを嫌いになったからじゃない 困らせて、 重荷になってしまっている自分が もういやになったの。 あなたに 幸せにしてもらうんじゃなくて、 自分の力で 幸せになれなければ、 あなたといて 幸せになれない。 あなたのそばにいられない。 そう、思ったの。 だから、 一人きりになることにしました。 あなたに さよならも言わないで 出てきたのは、 あなたの目を見たら さよならを言えなくなるから。 そう思ったの。 でも、 あなたといて 不幸だったわけじゃないのよ。 わかって。 淋しくて泣いただけ、 それだけあなたといると 幸せだとわかったの。 私にとって、 あなたがどれほど大切な人だと わかったの。 それなのに、 手紙も書かず、 ただ、鍵だけを封筒に入れて、 ポトリとポストに入れました。 ごめんね。 ひどいよね、こんなの。 でも、そうするしかなかったの。 ほんとうは…、 鍵を返したくなかった。 いつでも帰ってこられるように…。 いつの日か、 一人でいても、 いつも 笑っていられるようになったら、 そして、 あなたが 私を許してくれるなら、 そのとき私は あなたの元に帰ります。 元気に笑って「ただいま!」って。
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