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私が13歳になってすぐ、母がこの世を去った。
原因は、子宮頸がんだった。
発見された時には、すでに手の施しようがなく、母も延命治療を望まなかった。
「いつまでも辛く苦しい思いをしながら病院に缶詰めになるなら、残された命をお父さんとあなたのために、目いっぱい使いたい。出来るだけ、少しでもたくさんの時間を家族で過ごしたい」
そう言って、母は最期までの時間を文字通り必死に、そして笑顔で生きた。
痛かっただろう、苦しかっただろう。
そう想像するのは簡単だが、それでも母は、私たち家族との時間を選んだのだろう。
その死に顔は、安らかだった。
それから始まった、父とふたりの生活。
これまで母がやってきた家事を、私と父とで分担したが、ふたり掛かりで母がこれまでやってきた家事をやっても、母のように上手くいかない。
ご飯も美味しくないし、部屋だっていつも散らかってる。
次第に、母がいないストレスを感じていくようになった。
そして、そのストレスは否応なく父に向いていく。
「どうだった? お弁当……。」
「どうもこうもないよ! あんなみっともないお弁当、ひとり寂しく食べるしかないじゃん! 今日は購買で食べた!」
いつしか私は、父の前では笑わなくなった。
笑えなくなった。
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