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翌朝。
昨夜のことは夢で、母は実はいなかった……なんてことも覚悟していたのだが、
「おはよう。夏休みなのに起きるの早いのね。」
母は普通に朝食を作っていた。
久しぶりの、朝に和食。
母が亡くなってからは朝食を作る余裕などなく、総菜パンやカップ麺を朝食にしていたこの2年。
父も同じことを思っていたようで、母の後ろ姿を見ては嬉しそうにしていた。
「お父さんはそろそろ行かなくていいの?」
不意に母が父に問う。
お盆休みなのに仕事があるのかと思ったが、一緒にいなくてもいいなら気持ちも楽だ。黙って父の反応を待った。
「あぁ、食べ終わったら行ってこようかな。」
父は黙々と食事をし、普段着のままで家を出ていった。
「仕事、じゃないの?」
笑顔で見送る母に、私は訊ねる。
母は笑顔を崩さないまま、私に答えた。
「あぁ、お墓掃除に行かせたの。本当はお盆前には済ませておいて欲しかったんだけどね。」
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