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家に帰ると、父の車は無かった。
きっと買い物にでも行っているのだろう。
「……また、コンビニ弁当かな。」
料理を作るのが遅い父は、夕方に出かけてしまうと自炊では夕食の時間が遅くなってしまう。
故に、この時間に買い物に行くと、父は大体コンビニやスーパーで総菜を買ってくるのだ。
食べないよりはまし、なのだがそれも父と私の距離を広げる要因でもあった。
「ただいま……。」
誰もいない家に、挨拶をする。
これは、母が生きているときに身に着いた癖。
「あ、帰ってきた! おかえり~~!!」
「……え?」
誰もいないはずの家の中から、聞きなれた声がする。
私がずっと求めていた、優しい声が。
目の前には、死んだはずの母が立っていた。
「おかえり。さぁ入って。夕飯作るよ。」
母は、昔と変わらない明るい笑顔で、私に言った。
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