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深夜23時。
いつもなら寝室に行く時間だが、母とあと3日でお別れと知ると、離れたくなくなる。
スマホをいじりながら、それでも母の話を聞きながら、私は母の思い出を噛みしめていた。
「そろそろ寝なさい。夏休み中って言ったって、生活のリズムを崩すとお肌に影響するわよ。私があなたくらいの年だった頃は、少し夜更かしをしただけでもう顔にブツブツブツブツ吹き出物が……あぁ、思い出したくもない。」
母は、自分の若かった頃のことを思い出したのだろう。本当に嫌そうな表情を私たちに見せた。
その姿が、昔と変わらない母のままで、私も父も同じタイミングで笑ってしまった。
「なによ~、人が吹き出物で悩んだ過去を笑うんだ~!」
「お母さん、吹き出物じゃないよ、『ニキビ』だよ。」
「同じよ~」
「でも、今の母さんは肌も綺麗だし、良いじゃないか。」
「もう死んでるけどね。」
そんな他愛もない話で思い切り笑ううち、いつしか24時を回っていた。
「もっと話していたい。」
そう言いながらも、私は睡魔に負けそうだった。
そんな私に、母は言った。
「明日もまた、お話いっぱいしよう。」
その笑顔が昔のままだったので、私は素直に寝室に向かった。
私が眠りにつくまでの少しの間、リビングからは父と母の話し声が聞こえていた……。
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