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空は絶望していた。先程までの女性はとんでもない異形になっていたのだ。ただの学生で武器も持っておらず、しかも目の前にいるのは人じゃないモノだ。何をするかわからない恐怖に手が震え出す。思わず後ずさりしそうになるが……相手は逃す気はないらしい。
「この女の魂だけじゃ満足できねぇから、お前のことも喰ってやるよ」
ゲヒヒヒヒと嫌な笑い方をする。空は息を呑んだ。こんな映画みたいな展開あるのかと。このままなら、自分はこのわけのわからないモノにやられて人生終わり。
ーーそんなの、嫌だ。
「悪いな、俺ゲテモノ派じゃないんだわ。好きなタイプは綺麗なお姉さん、そして可愛い子!」
そう言い放ち空は駆け出した。しかし、路地裏から出ようとしたところで、相手の尻尾が伸びてきて空を捕まえる。
「ぐっあ……!!」
そのまま地面に叩きつけられる。
「おいおい、逃げられるとでも思ってんのか?」
相手が近づいてくる。空はなんとか逃れようともがくが尻尾の力が強すぎて抜け出せない。そして、相手は空の顔を掴むと……そのまま自分の顔を近づける。
「あばよ」
そんな声が聞こえたと同時に、空は強く思った。嫌だ、死にたくないと。なんで自分が死ななければならない?なんでこんな奴に食われなければならない?この世の中にはもっと悪い奴らがいるのに、なんで自分が?とそんなことを考えて、強く、強く……否定した。
ーー自分がここで死ぬなんて許せない、と。
その時だった。誰かの声が脳に直接響いたのは。
『生きたいか?人間』
それは誰の声だとか、そんなことはわからない。けれど、この現状に対する答えなら持ち合わせている。
「っ、んなの、決まってん……だろっ」
「は?急に何言ってんだ?頭狂ったか人間」
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