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「お、おお!なら、おまえのことも簡単にやっつけられるってことか!」
「んなわけねぇだろぉが人間」
「んぎゃああああああ!」
相手の異様に伸びてきた腕を間一髪で躱して空は距離を取る。致命的な状況で2回も生き延びた……というよりは、その状況がなかったことになった?という不思議な現象が起きたが、決して戦えるような凄まじい力を得たわけではなかった。身体能力も以前と変わらない。こうして逃げることすら必死である。
「やばいやばいまずいまずい!これ死ぬ!確実に!」
「なんだよ、逃げるだけかぁ!?ぎゃはははははは!」
狭い路地裏での攻防は明らかに空に不利。これではやられるのは時間の問題だ。また先程の2回と同じようにピンチの状況がなかったことになるなんて保証もない。
どうする、どうする?と悩みながら必死に攻撃を避けると、気づいた時には壁に追い込まれていた。
「さぁて、もう逃げられないぜ」
「このっ……くそ!」
ジリジリと近づいてくる相手。空は最後の悪あがきと蹴りを放つが簡単に躱されてしまう。
「俺を倒したきゃ、もっと強くならなきゃなぁ!人間」
ニタリと笑って相手は空の腕を壁に押し付ける。その目には殺意しかなくて、これは本気で殺すつもりだと思い知らされた。恐怖で声も出ない空に相手はケタケタと嗤う。
「ヒャハハハ!さぁーて、お前の魂の味はどんなかな……」
相手がそう口にした時、その頭めがけて鉄パイプが振り下ろされる。「ぐえっ!?」と声を上げて相手はその場に倒れ込んだ。空の視界に見えたのは、黒髪ボブの少女。
「え……ええ!?え、この人、死?え、え?」
空は少女と目の前で倒れる女性だったモノを見比べる。頭から血を流して倒れた相手に動揺するその様子を見て少女はクスッと笑った。
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