1 決行

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1 決行

 私の計画は、今まさに山場…クライマックスを迎えようとしている。  今日は、私が復讐を誓ったあの日からちょうど一年。  決行は今晩。  この日のために、着々と準備を進めてきた。  そして、私の願いを叶えてくれる液体が、手にしたこの瓶の中で揺れている。  夫には見つからないように、ネットで手に入れたものだ。  抑えきれない微笑みが口の端が上がり、その瞬間を想像しただけで、胸が高鳴る。  その時、リビングでテレビを見ている夫の笑い声が響く。  実に楽し気に笑っている夫の横顔。  私の心に芽吹いた「もの」には、つゆほども気づいていない。  (それでいい…)  今日の晩御飯は、彩りを考えたカラフルな野菜のサラダ。  夫の好きなチキンを入れたグラタン。  添えるスープは、野菜たっぷりのミネストローネ。  そして……。  私にとってのは、デザートのだ。  ボウルに卵と砂糖を溶きほぐし、鍋で牛乳を沸騰直前まで温め、先ほどのボウルに入れてよく混ぜ、先に作ったカラメルが入った型に流し込む…。  そう。プリンだ。  今私の目の前には、型に流し込んで、後はオーブンへ入れるだけとなったプリンが並んでいる。  型に、卵液を流し込む。  もう一度夫を見ると、私の視線に気づいたのか、こちらを見て微笑む。  私も笑顔を返す。  夫の視線が、テレビへを戻るのをしっかりと確かめてから、私は先ほどのビンを取り出した。  一つのプリンへと、その液体がビンから滴り落ちてゆく…。    (ふふふ…)  私はうっとりと、それを眺める。    プリンの型を並べた天板を余熱が終わったオーブンに入れて、お湯を張り、扉を閉めてスタートボタンを押した。  
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