花は自らを花と知らない

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「こんばんは。良い夜を過ごしていますか?」 「コンラッド、良いパーティーに招待してくれてありがとう」 「コンラッド殿下、ありがとうございます」  挨拶をかわし、オレとコンラッドが並ぶとリアンがさらに憂鬱そうになった。扇子の奥ではぁ……とため息をついた。 「二人揃ってしまったわ。さらに視線が痛いわ。美しい花は花とは知らないのかしら?」  さっきからリアンがなにを言ってるのかわからない。 「リアン?」  オレが声を掛けるとなんでもないわと肩を竦める。コンラッドがリアンをみつめて、ニッコリ微笑む。 「今宵、王子である最後のダンスの機会になります。どうか一曲踊ってくれませんか?」  そう言ってリアンに手を伸ばす。オレの方をチラリと見て、リアンは良いの?と確認する。  まあ、ダンスくらいは良いだろうと苦笑して頷いた。リアンは嬉しそうなコンラッドに手をとられ、ダンスホールの中央へと行く。コンラッドのダンスの参加にざわめく周囲。  余裕のあるところを見せておこう。なにせオレはコンラッドの兄的な存在なのだから。酒の入ったグラスを手に持ち、二人のダンスを眺めることにしたのだった。
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