花は自らを花と知らない

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花は自らを花と知らない

 歓迎の夜会が開かれ、リアンと共に出席する。エイルシア王国の二倍はあるダンスホールにユクドール王国自慢の芸術家による見事な天井絵、豪華すぎる食事や飲み物、そして人が多すぎるため、うろ覚えの招待客がいるのも仕方ないだろう。 「お久しぶりです。エイルシア王」     挨拶されたのは何人目だろうか?見たことはある顔だが、名前を思い出せそうで思い出せない。 「お久しぶりです。お会いできて嬉しいです」  ニコリと笑ってかわしておこう。無難な挨拶でとオレは思った。しかし隣のリアンが扇子の奥で優雅に微笑み、ドレスの裾を持ちお辞儀する。 「ダラス=アグ=イシャール=ラ=ダーン公爵様は奥様のご容態は良くなられまして?我が国に来てくださった時は季節の変わり目でしたが、今は過ごしやすいですから、奥様もいかがでしょうか?」 「ええ!今回は国王も老齢で来れないため代名で参りました。妻のことを気に留めてくださっていたとは!嬉しい限りです!体調は良くなり、今は保養地でのんびりしております。ありがとうございます」  そうだ。やけに長い名前の人だとは思っていたんだ。にこやかに去っていく。
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