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死期
後日、彼女が死んだことがわかった。
おれが振られたあの日の帰り道、彼女は脳震盪で倒れ、そのまま死んでしまった。
彼女は、自分の懐に遺書を忍ばせていたらしい。
彼女は自分の死期が分かっていたのだろう。
本当に不思議な人だ。
死期が分かっていたからこそ、彼女はまるで死んでしまう直前の猫のように、おれから離れたのだろう。
おれの悲しみを最低限にするために。
身勝手な人だ。
彼女の遺書には、おれに当てられたものがあった。
そのには彼女らしい一節が綴られていた。
『貴方、必死に生きて。きっと貴方なら、私が居なくても生きていける。どうか、私を恨まないでください。直ぐに忘れることが出来ずとも、いずれ幸せになってください』
本当に、身勝手な人だ。
静かに涙が零れた。
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