君が戻って来たならば

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君が戻って来たならば

 ヴィクの腕の中は温かかった。  泣き出してしまいたいぐらい、懐かしくて、ずっと求めていたものだった。  俺はウズラの卵パックから片手を外し、ヴィクの背中に両腕を回した。  右手はヴィクの背中をしっかりと掴み、左手はウズラパックを持ちながらでも左腕に力を込めてヴィクの背中を抱いていた。  すると、すっと俺の指先から卵パックが消えた。  ヴィクの肩越しから覗けば、ジョサイヤがそのパックを受け取ってくれていた。  そして彼はそのパックを持ったまま、部屋を出て行こうと扉を開けた。 「待って! それは食べないで! 孵化させるために買って来たの!」 「聞いていましたからわかっていますよ」  笑い声でジョサイヤは返し、そのままぱたんとドアは閉まった。  俺はぐいっとヴィクに抱え直され、俺は空になった手で思いっきりヴィクを抱き締めた。  顔を当てているヴィクの胸から大きな鼓動が聞こえた。 「ああ、会いたかった。ずっとずっとあなたの事しか考えられなかった」 「同じだ。ああ、俺もそうだった。毎日毎日君の事しか考えられなかった」  俺は顔を上に向けた。  目は閉じなかった。  俺を抱き締めるヴィクが夢では無いと、ヴィクの顔を見つめていたかった。  そんな俺にヴィクは吹き出し、吹き出しながらも顔を俺に近づけた。 「キスは嫌かな?」 「あなたにキスされるまで目を開けていたい。キスされる前に夢から覚めたら怖いじゃないか」 「ハハ。それは怖いな。本当に君は怖い。君が消えたら俺はそこで終わりなような気がするよ」 「ヴィク」  俺の唇にヴィクの唇は触れて、俺の背骨に電気が走ったように感じて俺は体をびくっと震わせた。 「嫌か? 怖いか?」 「違う。腰の方に受けたことない感覚が湧いたんだ」  俺を抱き締めている男はそこで吹き出して、わかる、と呟いた。  それから彼の背中に腕を回している俺の右手を掴むと、その手を彼の大事な場所へと動かした。  指先には硬いヴィクのものが触れ、俺はぴきーんと固まった。  ヴィクは楽しそうに笑い声をあげると、簡単に俺の手を解放し、俺を抱き締め直して、なんと、子供にするようにして頭を撫で始めたのだ。 「かわいいな。本当に可愛い。君にキスしただけで俺をこんな風にしてしまう悪辣な奴なのに、どうしてこんなに可愛いばかりなんだろう」 「可愛いばっかり! 普通は可愛いと言われて男は喜ばないだろ」 「ハハハ、アキは嫌だったか」  俺は目をつぶって唇を突き出した。  すかさず俺の唇はヴィクに蹂躙され、俺の腰骨にはキスによってビリビリとした感覚が走り、俺をその感覚を受ける度に小さくびくびくと震えていた。  どうして嫌と感じないのか。  どうしてヴィクの舌を柔らかく甘いものとしか感じないのだろう。  俺は気が付けば立ってはおらず、長椅子のようなものに横たえられていた。  それだけでなく、俺の足の間にヴィクの体が覆いかぶさり、ヴィクの体に俺の下半身擦られて刺激を受けてる状況になってしまった。  そうだ、俺もヴィクによって自身を猛らしているのだ。  ヴィクの唇は俺から外れ、俺の顎や耳の下、頬や眉毛に額と、小さなキスをし始めた。 「ああ、かわ。いや、久しぶりのアキの美しい顔だ」 「言えよ。可愛いって」 「君が嫌だと」 「嫌なこともヴィクだったらいいよ。ヴィクに可愛がられるならね、どんどん俺を可愛いって褒めてくれ」 「ああ、可愛い。それにこの憎たらしい喋り方。いつもこの喋り方をしてくれ。この喋り方の方が君自身なんだろう?」 「おい、威厳が消えているぞ」 「憎らしい!」  嬉しそうな声をヴィクはあげると、本格的な攻撃を俺に仕掛けていいた。  いや、シャツをぐっと捲り上げ、俺の胸板を舐めて来たのだ。  いや、吸われているのか? 「はあん」  俺の身体は弓なりになり、その体のしなりに合わせて、なんと、ジーンズまでも一気に脱がされてしまったのだ。  え、次は?  男同士の次は? 「ちょ、ちょっと待ってください! わお、きゃっ」  く、咥えられた?
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