ある夜の恋のゆくえ

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iPhoneが震えた。 表に返して画面を見ると、 『今、どこ?』 柴田からのLINE。 『会社』と一言だけ返す。 時計を見ると、20時を過ぎたところだった。 20:30には出ようかな。 今日はもう、夕食はなしでいいか。 帰ったらお風呂に浸かってゆっくり休もう。 一人でベッドで体伸ばして、のびのび寝ちゃおうー。 と自宅ですることを頭に思い浮かべながら、この1枚で終わり、と決めたものがまもなく終わる頃、隣の席の椅子が後ろに引かれた。 「遅くまで、お疲れ様」 どさり、と柴田がそこに座って、美和の顔を覗きこんだ。 「そろそろ終わりそう?」 「え、何してるの?」 美和は驚いて、その顔をまじまじと見た。 「何って、迎えに来たんだよ?」 逆に柴田の方が意外な顔をして、そんなのアタリマエといった調子で言う。 「伊東さんは?」 「駅で別れた。電車、逆方向だったし」 「伊東さんの相談事は?」 「たぶん、解決したんじゃないかな」 「たぶん?」 彼がそんなふうに適当な言い方をするのは珍しい。 もし仕事のことなら、よほど内密のことでない限りは、その悩みがどんなことだったから、こんなふうに提案した、というところまで言いそうだった。 個人の秘密に関わることであれば、個人的なことだったから詳しくは話せない、とか。 美和は、ちゃんと話を聞こうと、彼の方に体を向けた。 「それより、美和さん」 柴田は、うれしそうな表情を隠さず、手に持っていたビニール袋を急いで差し出した。 「これ、先食べて」 美和は目の前にぶら下げられたそれを受け取り、袋の中から取り出す。 初めて見るデザインのカップに入ったアイスクリームだった。 「これ……」 「食べてみたいって言ってたじゃん。 そこのコンビニで見つけたから、買ってきた」 数日前、SNSで話題になっていた、期間限定・地域限定のティラミスを模したアイスクリームを、見つけたら食べてみたい、と美和が言ったことがあった。 そのアイスクリームだった。
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