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いつもの4人グループ
四月末の暖気に馴染む校庭の葉桜が、4年A組の教室の窓を鮮やかな若草色に縁取る。
「さとりん。ゴールデンウィークの職業体験レポート、何にするか決めた?」
ぼうっと校庭を眺める里梨様に突如かかる声。その主は幼稚舎からの学友、金城紬嬢だ。
彼女が朝から放課後まで全ての休み時間、里梨様の元にやって来るのは窓際の席が暖かいから、というわけではない。
「おっ。オレにも聞けよ! オレは父さんのツテで休日署長するんだ」
里梨様と親しむ級友はもうあとふたり、一族みな警察関係者、警視監の祖父を持つ九条湊坊ちゃんと、
「結局親の職場潜入になるよな。綾鷹も大病院について書くんだろ」
一般家庭の出だが飛びぬけたIQで入試を突破したと評判の菅原亮太君だ。彼らとは去年から親しくしている。
「たぶん。私も親に頼んでみないと」
この言葉尻で少し下がったマスクを鼻筋にクイと戻す里梨様。その指先を目で追った湊君は、くるりとはねた睫毛に縁取られる大きな瞳に一時見惚れ、口が半開きになっていた。
「湊さ、そこらの警察署で一日署長なんて誰でもできるじゃないか」
「へっ?」
「そうよね。警視監の孫っていうのなら、警視庁のもっと深いところに入っていって、偉い人しか知らない情報をゲットして捜査に一役買うとか」
紬嬢の提案は課題レポートの主旨を逸脱しているのだが。
「オレだって知ってるよ、機密情報!」
「おい、声が大きい!」
機密なんだろっ? と亮太君は湊君の口を慌てて塞いだ。
「今ここらではスゲーふしぎなことが起きてるんだ。この“逆”事件を解明したら警察協力章を受章できるぜ」
「「「逆、事件?」」」
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