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「(ヴィクトル様とルティ様は別人のようだって思っていたけれど、それはブリジットだった私が気づかなかっただけで……根っこの部分はずっと変わってなかった?)じゃあ、あの夜に私を攫いに来たのは……」
「私の姿に扮したダニエラだったようだ」
「──っ!?」
ルティ様が人差し指を向けた途端、空間が歪んで場内に変わった。花嫁のブリジットを残してヴィクトル様が部屋を出た。回廊を歩いたところでヴィクトルの姿がダニエラに変わる。それと同時に、本物のヴィクトル様と鉢合わせをした。
『ダニエラ、一体なにをした!?』
『えーっと、クレパルティ王国だっけ? そこの王様に相談して、天狐王国との国交を開く代わりに、君の《片翼》を引き取ってきたのさ。王様も、彼女も快諾してくれたんだよ。《片翼》として、君の伴侶になれて光栄だって』
『……彼女が?』
『そう。でも気をつけないとダメだよ! 僕が君の名前を呼ばないように注意しておいたから。まだ魔力炉もない人族に、君の名前を呼ばせたら肉体的な負荷が掛かるからね』
『あ、ああ……。求愛紋が馴染んで、魔力炉と魔力回線ができれば……彼女の名前が呼べるのだな。楽しみだ……』
こんな事実をブリジットは知らない。最期まで知らずに死んだ。そう思うと自分の愚鈍さに呆れた。私は何を見ていたのだろう、と。
対話を求めていたのは、同じだったのに……。
「愚かだろう。幼馴染で、親友だった彼女の言葉をなんら疑わなかったのだから。彼女は《高魔力保持者》でもないのに……違和感がなかったわけじゃない。でも君が望んでくれた──それが嬉しくて……君から祖国を奪った」
「ううん。私もヴィクトル様とダニエラ様の区別が付いていなかったし、……そのせいで生贄だと思い込んでしまった……」
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