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『お前たち、そして侍女、使用人も含めて私の《片翼》を……よくも貶め、虐げ、悪意に晒し続けてくれたな……』
一瞬で血の海となった部屋は、二人の血と鉄の匂いに満ちていた。ヴィクトル様の視線は一度だって二人には向けられず、ブリジットだけを見ている。
その眼差しはルティ様と同じく深い愛情に満ちていた。ああ、こんな風にブリジットを見ていてくれたのね。
『兄様? …………急にどうして?』
『つい先ほどまでは、ダニエラの言葉を信じていた。──が、ブリジットから感情が……流れ込んでくる。報告とは全く違う光景に、覚えのない私の言葉、こんなにも私と対話を求めていたのに……私はその機会を全て……っ』
『意識共有? そんなのができるのは本物の……《片翼》同士だけ。う、嘘だ。ダニエラは……僕に嘘なんか……』
『あああああああああ! 私の体があああ! 腕が、足があああああ!!』
ダニエラ様は痛みで錯乱してもがき苦しむ。それを見てジェミアン様はダニエラ様に掴み掛かった。
『ダニエラ、君は僕に嘘なんか付いてないよね? 僕は──』
『ああああっ、うるさい! お前が中途半端に追い詰めるからこうなったんだ! 毒で弱らせて、それから死んだことにさせればああああ、良かったのにぃいいい! 私が呟いたことを本気して、あの女を追い詰めるから予定が狂ったわ!!』
『……なっ、僕は君が……っ』
『お前たちにはそれぞれ相応しい罰を与える。逃げられると思うなよ』
酷く冷ややかな声だった。
死を宣告した声の刃が、二人に絶望を与える。
『……あはははっ、いいよ。君に殺されるのなら本望だよ。ヴィクトル』
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