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手紙を読み終わった私は、封筒と便箋をリビングのテーブルに置き、お母さんに麦茶ちょうだいとお願いした。
「あんたね、自分ちなんだから遠慮せず自分でやっていいんだよ」
「はあーい」
久しぶりなんだから甘やかしてくれてもいいのに。
光島先生は、多くの生徒から慕われていたようだけど、私には理不尽に厳しく当たる人だったし、ちょっとセクハラめいた言動もされて不愉快だった。
なので、今回のことはまあいい気味かなと思った。
確かに、もうずっと前からろくにものも食べられないくらいに衰弱してたって聞いてたけど。
手紙の様子だと、つき添いもなしに一人で来たのかな。
しかも車いすから立ち上がったのか。それはみんなびっくりしただろうな。
それにしても液体窒素で凍らせた人一人をバラバラになんて、思い切ったことをしたものだ。
みんなが運んでる途中で、溶けてなきゃいいけど。
世間から見ればけっこう猟奇的な事件なんだろうけど、私の学校、変わり者多かったからなあ。
それにしても広岡くん、手紙には拝啓とか敬具とか書けよ、あと便箋を入れる順番を間違えるなよ、一瞬とんでもない想像をしちゃったじゃないか、と思いつつ、私は冷蔵庫に向かった。
終
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